ご馳走のために、旅をする。
秋が深まる蒲郡で、ふたつの新しいおいしさと、いくつかの寄り道
十一月の海は、いちばん静かだ
十月が終わると、蒲郡の海は急に落ち着く。夏のざわめきが引き、三河湾の水面が一段深い青になる。沖の竹島も、空気が澄んだぶんだけ輪郭がくっきり見える。
同時に、山が色づき始める。海辺の町だと思って来られる方に、蒲郡はいつも少し意表を突く。海岸から車で二十分も走れば、そこはもう紅葉の尾根だ。海と山の距離が、これほど近い町はそう多くない。
そして十一月は、食の季節でもある。三河湾の魚が脂をのせ、鮑が身を締め、野菜が甘みを増す。今年、この季節に合わせるように、私たちはふたつの新しいコースをご用意した。今月のコラムは、その話から始めたい。
一、ご馳走のために、旅をする。
銀波荘から、ふたつの新しいおいしさを
2026年10月29日、宿の公式サイトで「ご馳走のために旅をする。銀波荘から、ふたつの新しい美味しさを」と題したお知らせを出した。旅の目的が「食」そのものになる——そういう宿でありたいという、ここ数年の思いをかたちにしたものである。
「ご馳走のために旅をする。」バナー / 出典:旬景浪漫 銀波荘 公式サイト
A|鉄板ダイニング 碧 -AO- 特別コース
~活き鮑・平貝・牛フィレとフォアグラ~
ひとつめは、オープンキッチンの鉄板カウンターで味わう洋のコース。鉄板の音と匂いが、そのまま前菜になる席である。
手前左が牛フィレとフォアグラのロッシーニ風、右が平貝の殻を器にしたカルパッチョ、中央が活き鮑の鉄板焼き / 出典:旬景浪漫 銀波荘 公式サイト
■ 見どころ(公式発表より)
- 三河湾の地魚と平貝のカルパッチョ 平貝の殻を器に見立てた、目にも楽しい一皿。爽やかな蒲郡みかんのソースで仕上げる。
- 活き鮑の鉄板焼き 焼き上げた活き鮑に、白味噌と麹のクリームソースを合わせる。ふっくらとした身の食感。
- 愛知県産牛フィレ肉とフォアグラの鉄板焼き ロッシーニ風 やわらかなフィレの旨みにフォアグラのコクを重ね、香り高いトリュフソースで。
■ お品書き(全8品) カルパッチョ/オードブル/スープ/活き鮑の鉄板焼き/ミニサラダ/牛フィレとフォアグラの鉄板焼き/〆のお食事/デザート。食後にコーヒーまたは紅茶が付く。 ※内容は季節や仕入れの状況により変わる 旬景浪漫 銀波荘。
会場は「旬景ダイニング碧 -AO-」。夕暮れの三河湾を外に眺めながら、鉄板の前でできたてを受け取る席だ。3名以上はテーブル席での案内となる。ご予約は公式サイト
W|和食 特別会席
~鮑の酒蒸し×国産牛サーロイン 西浦の地魚まで全11品~
もうひとつは、和の会席。こちらは「旅の目的にしたくなる、全11品」という言葉どおり、地元の港と海を正面から見据えた構成である。
特別会席の一例。氷器の造り、茶碗蒸し、鮑の器、国産牛。写真はイメージ / 出典:旬景浪漫 銀波荘 公式サイト
■ 見どころ(公式発表より)
- 鮑の酒蒸し あらかじめ切り込みを入れ、酒蒸しに。やわらかく、どなたにも召し上がりやすい仕上がり。
- 国産牛サーロインのプレート焼き きめ細かなサシの入った国産牛をプレート焼きで。卸し醤油・岩塩・山葵の3種で味わう。
- 西浦漁港に揚がる地魚のお造り 深海魚漁が盛んな西浦ならではの、脂ののった魚。その季節いちばんの味を、獲れたてで。
「鮑は酒蒸しにすると、殻から外さずに火を入れるぶん、磯の香りが逃げない」——厨房ではそう言っている。鉄板で香ばしく焼く鮑と、酒蒸しでふっくら仕上げる鮑。同じ素材を、二つの異なる手法で主役に据えたのが、今回の「ふたつ」の面白さでもある。
料金について いずれも宿泊プランとしてご用意しております。
日程・部屋タイプにより変動するため、最新の価格は予約ページでご確認いただきたい。ご予約は公式予約サイト
二、食の前後に、どこへ寄るか ― 11月の近隣案内
ご馳走は、食卓の上だけで完結しない。そこへ至る道の景色と、食後の余韻の時間までを含めて、私は「ご馳走」だと思っている。十一月に足を延ばしていただきたい場所を、いくつか挙げておきたい。
① 豊川稲荷 御開帳 ― 72年ぶり、11月23日まで
まずはこれをお伝えしなければならない。豊川稲荷(豊川閣妙厳寺)で、72年ぶりの「御開帳」が2026年11月1日から11月23日まで開催されている 豊川稲荷御開帳 公式サイト。
本殿創建100年に向けた72年ぶりの御開帳 / 出典:豊川稲荷御開帳 公式サイト
通常、本殿内の「祈祷施主殿」は御祈祷を受ける方のみが入れる場所だが、御開帳期間中は「本殿拝観」として、御前立尊像のより近い場所で拝礼できる特別仕様になる。内殿中心には、善の綱で繋がれた銅製の尊像が祀られている 豊川稲荷御開帳 公式サイト。
- 受付時間:11月期中 8:00〜16:00(金・土・日・祝は本殿のみ20:00まで)
- 注意:21日・22日の13:00〜15:00は大祭のため本殿休止
- 見どころ:西元祐貴氏による襖絵「豊川 新鳥獣戯画」の乙巻が2026年11月3日に完成予定
特別拝観の案内 / 出典:豊川稲荷御開帳 公式サイト
72年に一度というのは、人生で一度あるかどうかの機会だ。しかも今年は11月開催。紅葉の季節と重なっている。
② 三谷弘法山 ― 大師像と、イロハモミジ
蒲郡市三谷町、標高100mの丘に立つ子安弘法大師像。像高18.7m、台座を含めると30mで、蒲郡のランドマークのひとつになっている。像のすぐそばまで車で行けるため、高齢の方にも人気がある 花のみごろ.com。
イロハモミジが色づく大師像周辺(2024年11月22日撮影) / 出典:花のみごろ.com
うれしいのは、像の周辺にイロハモミジの若木が寄贈者を募って植栽されていること。若木は年々育ち、十一月下旬には大師像の背後や足元が赤く染まる。遠く名古屋、浜松からも参拝者が訪れる紅葉の名所になった 花のみごろ.com。
- 住所:愛知県蒲郡市三谷町南山14(高野山真言宗 三河高野山 金剛寺)
- 電話:0533-69-7379/入場無料・駐車場無料
③ 西浦園地のつわぶき ― 宿からいちばん近い、黄色
西浦半島の先端、海を見下ろす高台にある西浦園地。春は約300本の桜で埋まる公園だが、秋はまったく別の表情を見せる。園地周辺の斜面がツワブキの黄色い絨毯になるのだ 東三河を歩こう。
斜面を覆うツワブキの黄花 / 出典:中日新聞Web
左:海を望む園地、右:ツワブキの花 / 出典:旬景浪漫 銀波荘「西浦園地つわぶきまつり」
昨年は11月23日に、西浦観光協会による一日限りの「つわぶきまつり」が開かれ、焼きたてのみたらし団子やパン、ヨガ体験などが用意された 旬景浪漫 銀波荘。今年の開催については、西浦観光協会の案内をご確認いただきたい。
宿から車ですぐの距離で、しかも銀波荘とは少し違う角度の海が見られる。食前の散歩にちょうどいい。
④ 三河湾スカイライン ― 五井山周辺の紅葉
幸田町から蒲郡市へ至る全長16.3kmの観光道路。2006年に無料開放され、尾根伝いに走りながら所々で三河湾の絶景に出会える 愛知県 観光(mytabi)。
秋は五井山周辺の紅葉が見事で、ハイキングにも適したエリアになる 愛知県 観光(mytabi)。
尾根伝いの道から望む三河湾。木々が色づくと海の青がより深く見える / 出典:日本絶景街道を走る!
⑤ 三ヶ根山スカイライン ― 紅葉が終わったら、光の季節
西尾市東幡豆町から蒲郡市金平町へ抜ける5.1kmの有料道路。初夏のアジサイで知られるが、秋は標高350mの尾根区間で紅葉が始まり、11月中旬から3月中旬には三ヶ根山山頂駐車場周辺がイルミネーションに包まれる Aichi Now(愛知県観光サイト)。
- 料金:普通車・軽自動車420円/二輪280円
- 通行時間:8:00〜20:00
- アクセス:音羽蒲郡ICから約40分
紅葉が終わった山が、今度は光で色づく。明るいうちに尾根を走り、暗くなってから山頂で光を眺める。十一月のいちばん贅沢な使い方だと思う。
⑥ 竹島 ― 387mの橋を渡る
蒲郡の象徴。島全体の社叢が国の天然記念物に指定され、対岸とは全長387mの竹島橋で結ばれている。この橋は縁結びの橋と呼ばれ、パートナーと中央を空けないように渡ると幸せが続くと言われる。島の中央部には、開運・安産・縁結びの神をまつる日本七弁財天のひとつ、八百富神社がある 銀波荘 蒲郡観光ガイド。
三河湾に浮かぶ竹島と竹島橋 / 出典:花のみごろ.com
⑦ ラグーナテンボス ― 同じ蒲郡で、11月8日から
じつは蒲郡市内にもうひとつ、11月の楽しみがある。ラグーナテンボスの冬のイルミネーション「光と水のカーニバル」が、2026年11月8日(日)から始まる。クリスマスツリーやクリスマスマーケットは2027年2月28日まで、コンテンツによっては4月上旬まで続く Aichi Now。
光のドームが並ぶ園内 / 出典:ファッションプレス
海をモチーフにしたドーム型のイルミネーションや、シャンパンゴールドの巨大アーチ、360°3Dマッピングなどが並ぶ Aichi Now。宿の露天風呂から見る夜景とは、また違った顔の蒲郡である。
十一月の見どころ、まとめて
| スポット | 11月の見どころ | 期間・目安 |
|---|---|---|
| 豊川稲荷 御開帳 | 72年ぶりの本殿拝観 | 11/1〜11/23(受付8:00〜16:00) |
| 三谷弘法山 | 大師像周辺のイロハモミジ | 11月下旬 |
| 西浦園地 | ツワブキの黄色い絨毯 | 11月(昨年は11/23に花まつり) |
| 三河湾スカイライン | 五井山周辺の紅葉 | 11月中旬〜下旬 |
| 三ヶ根山スカイライン | 紅葉、そして山頂イルミネーション | イルミは11月中旬〜3月中旬 |
| 竹島・八百富神社 | 島全体の社叢、縁結びの橋 | 通年 |
| ラグーナテンボス | 光と水のカーニバル | 11/8スタート |
三、最後は、湯に沈む
一日の終わりは、やはり湯だ。
西浦温泉の湯は、平成10年に海岸から1.5km、地下1,200mで見つかった新しい湯脈。海岸地帯には珍しい塩分・カルシウムの少ないアルカリ性単純泉で、各種イオンを含む無色透明の湯。「美人の湯」として知られ、美白泉と名づけられた 銀波荘 温泉。
婦人大浴場 風澄乃湯。夕暮れ時、海と空の境目が溶けていく / 出典:銀波荘 温泉
天游閣3階の大浴場は、女性が風澄乃湯、男性が光彩乃湯。どちらも三河湾を正面に見据えた露天をもつ。最上階には貸切露天風呂「月物語」「星物語」もあり、宿泊は1人1,100円(税込)/50分、昼食利用は1人1,700円(税込)/50分 銀波荘 温泉。
鉄板の前で鮑を食べ、尾根で紅葉を見て、湯に沈む。十一月の蒲郡は、この順番で回ると気持ちがいい。
おわりに
「ご馳走のために、旅をする。」
この言葉を最初に書いたとき、少し大げさだろうかと思った。けれど十一月の蒲郡を歩いて、考えが変わった。ご馳走は、皿の上にあるのではない。そこへ向かう道と、そこから帰る時間まで含めて、ご馳走なのだ。
豊川稲荷の72年ぶりも、西浦園地の黄色も、三ヶ根山の尾根から見る海も、すべては「今日の夕食のために」という一本の線でつながっている。今月は、その線をできるだけ太く描いてみた。
紅葉の色は、年によって数日ずれる。だからこそ、予定を詰め込みすぎず、空の時間を残して来ていただきたい。尾根の上で、ちょっと車を停める。それだけのことに、この町は十分こたえてくれる。
食卓で、お待ちしております。
旬景浪漫 銀波荘 〒443-0105 愛知県蒲郡市西浦町大山25 TEL:0533-57-1515(受付 9:00〜18:00)/FAX:0533-57-1519 宿泊予約|日帰り予約|蒲郡観光ガイド|アクセス
旬景浪漫 銀波荘 総支配人 板倉英之
この記事の監修者
板倉 英之
旬景浪漫銀波荘 総支配人
宿泊サービス業界に長年携わり、2025年に旬景浪漫 銀波荘の総支配人に着任しました。これまでの現場経験を活かし、現在は館内運営全般を統括しています。
西浦温泉の泉質「美白泉」をはじめ、地域の温泉や観光の魅力にも精通しており、地域・行政・観光協会との連携にも携わっています。
「おもてなし」の心を第一に、宿泊するためだけの旅館ではなく、地域の皆様やお客様に何度でも足を運んでいただける**「通う旅館」**を目指しています。
こうした現場経験と地域に関する知識をもとに、銀波荘の施設・サービス・周辺観光情報など、記事内容の確認・監修を行っています。
内容は変更となる場合がございますので、最新情報は公式サイトまたはお電話(0533-57-1515)でご確認ください。|最終更新日:2026年11月1日